2018年11月8日木曜日

熊本大学入口名誉教授に伺った電磁波の生態に与える影響についてのお話です。

最近、インターネット上で放射能よりも、電磁波が怖いと言う情報が拡散されていて、電磁波治療を受けると、さまざまな病気が良くなると言うお話を聞いて、YouTubeでそういうお話をされているお医者様の録画を拝見しました。

こちらです。

カタカムナの治療法を施術向けに大公開! 


「あなたの病気、電磁波が原因かもしれません」~現役医師が明かす知られざる治療法とは?~ 


とても不思議に思って、熊本大学入口名誉教授にこのビデオを2つお送りして、見ていただいて、お話を伺ってみました。

入口先生
「Mという医師の動画を見せていただきました。
 世界中で日本だけが特に電磁波の悪影響を受けているなどということはありません。携帯電話の影響なら世界中のどこにでもあります。
 電気コンセントやブレーカーのスイッチングで、瞬時に火花を伴うことがあって電磁波は出ますが、それは 1ミリ秒以下の一瞬です。しかも多くの電気機器は人から何センチ以上も離れていますから、携帯電話を耳に近づけて何時間も通話するほどの電磁波の影響はありません。
「カタカムナ」という文字を背中に貼って「電磁波の影響がプラスに転じること」など科学的にはあり得ません。
「DNAのコードを病気をつくる振動数から病気をつくらない振動数に変えること」や、それを「光と電磁波でコントロールすること」など科学的には意味不明です。
 このMという医師は、「今から1万年以上前にカタカムナという文字が使われていた」などと言っているようですが、1万年前にこの地上に文字は存在しませんでした。
 一般に文字は絵文字から発展したものと信じられていますが、世界で最初に文字が発明されたメソポタミアでは事情はやや異なっていました。今から約 6,000年前の古代メソポタミアには「トークン」(token)と呼ばれる 1~3センチの硬い粘土片がありました。トークンは一定の形をした印鑑のようなもので、それを柔らかい粘土板に押し付けると文字ができます。粘土はメソポタミア地方で豊富に採れました。そのようにして古代メソポタミアではトークンが文明の記録を担っていました。
 このMという医師は、電磁波という自分でも眼に見えないものについて、事実は病気の原因でないのに実際それがあたかも原因であるかのように作りあげて、心因性の様ざまな症状をそのせいに見せかけているようです。
 しかし、もともとこのMという医師を訪ねる患者は、その症状が「心因的」なものが多いのでしょう。すると、その患者が医師との「信頼関係」のうえで、カタカムナを背中につけて、「どうです?治ったでしょう」といわれると脳の血流も増えるでしょう。ただそれだけのことなのでしょう。
 しかし、侮れません。「医術」はテクノロジー(technology)であって、サイエンス(science)ではないからです。もっとも、医術も本来はサイエンスに依拠すべきものではあるのでしょうが、このMという医師がやっていることはサイエンスには依拠しないほうの、自らの押しの強さとパフォーマンスだけを活かした医術です。それだけで患者が治れば、それで結構です。目的は達成されます。
 しかし、原因が「心因的」なものでない本物の患者はそんなものでは治りませんから気の毒です。「どうです?治ったでしょう」といわれてその時は治ったつもりでも本当は治っていなかったことに気がついて「しまった、カタカムナなどの食わせ物に欺かれて治療代を支払わされた」と感じるでしょう。それでも、このMという医師は、日本では医療過誤や不正医療について現実には告発が少ない(そのような告発を科学的に支えてくれる人も、あまり割に合う仕事でないないから少ない)ことを逆手にとってそれをうまく利用しているのだと私は思います。
 私にはそもそもこのMという医師について本来は誹謗・中傷する意図も動機もありませんが、ご提示いただきました二つの動画につきまして、単に科学的に申し述べますと、以上の通りです。

電磁波の生体への影響について世界が認める第一人者は、私でなく、私の指導教授であります上野照剛・東大名誉教授です(いま故郷の福岡にお住まいです)。
 しかし、私から簡単にコメントを申し述べますと、電磁波の生体への影響は「刺激作用」と「発熱作用」です。
 このうち「刺激作用」は強力な電磁波兵器などからの電磁波を浴びて(電解液からなっている人体に電流が流れて)感じるもので、我われが日常生活で遭遇することはありません。
 もう一つの「発熱作用」は、これを利用したものが電子レンジです。
 電子レンジでは、24億5千万ヘルツ(2,450メガヘルツ)の600ワットくらいの電磁波を水に照射します。その電磁波は眼に見えませんが、光のように直進性があり、また、金属の板や目の細かい金網で反射します。電磁波は電子レンジ(金属の板や金網でできた箱)の中で反射を繰り返しながら直進しますが、「波」なのですから山(プラス)と谷(マイナス)があって、このプラス・マイナスが 1秒間に24億5千万回、直進し、反射されながら変化します。
 水は水素原子核(H+)2個と酸素原子核(O-)1個が結合したものですね。
 そのように水は小さな乾電池のようにプラス(水素原子核)とマイナス(酸素原子核)の二つの電極をもつ「双極子(そうきょくし)」と呼ばれる微小な分子です。この双極子(水の分子)1個は 電子レンジの中で1秒間に 24億5千万回という高速で反転します(時計回りに回ったり反時計回りに回ったり)。
 コップ一杯の水(180グラム)には6億京もの水の分子があって、それらが互いにぶつかり合いながらそれぞれ反転しますのでその摩擦で熱が発生します。
 600ワットでは 1秒間に 144カロリーの熱が発生します(144グラムの水は温度が 1秒間に 1℃上がります)。
 以上が電子レンジの原理です。
 携帯電話を耳に近づけて電磁波を送受信すると、耳の近くにはそのすぐ近くの脳細胞の中にも水があるので、長時間通話をすると耳の近くの脳細胞の温度が上がり発がんにつながるのではないかと懸念されて来ました。
 2011年5月に国際がん研究機関(IARC, International Agency for Research on Cancer)は2000-2004年に診断された2708人のグリオーマ(悪性脳腫瘍)患者と2972
人の健常者についての調査報告を行い、携帯電話を累積で 1,640時間以上使用した群では、携帯電話を使用したことがない群に比べて、悪性脳腫瘍であるグリオーマの発生が
1.40倍であると報告しました。
 携帯電話各社は微弱な電波で送受信できるように送受信感度の格段の向上に努めており、現在は2000-2004年当時に比べて発がん性は格段と低下している上、基準を設けて製造販売規制も行われていますので、発がんの懸念は少なくなっていると私は考えています。それでも、携帯電話にはイヤホンを付けて耳からなるべく離して使うのがよいのではないかと私は感じています(私自身はイヤホンを使っていませんけれど)。
 以上申し述べましたように、「刺激作用」と「発熱作用」だけです。

のページが参考に値するのではないかと思います。

草の根の世界ではそれでもビジネスになっていることに心がふと立ち止まります。
 電磁波のない家に改造して「刺激作用」と「発熱作用」を避けても、証拠として眼に見えるほどの効果はないのではないかと私は感じます。







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