2014年3月27日木曜日

フクシマ核災害から3年後」IPPNW(核戦争防止国際医師会議)共同議長の日本への警告

http://peaceandhealthblog.com/2014/03/11/fukushima-three-years-on/

記事の和訳
世界で最も複雑な原子力発電所災害は、3 年経った今も続いている。そして、これから何年もの間、災害は引き続いていく。一日あたり、凡そ 1000 トンほどの、制御不能な地下水の流れが現場へと流れ込み続けている。; 日々、400 トンの水が損壊された原子炉と建屋に流入し、そこで放射能汚染されていく。その一部は収集処理される。 ー 今、 430,000 トン以上の放射能汚染された水が、約 1,000基の当座しのぎにつくられた貯水タンクに収容されている。その中の多くの貯水タンクは溶接されるのではなく、ボルトで継目が締められており、タンクの中にどのぐらいの水量が収容されているのかを表示する水位計もなく、何度も漏水を繰り返している
 先月、2 つの弁が誤って開けっ放しになっていたことと、ひとつが機能不全だったことが起因となって、1 リットルあたり 2 億 3 千万ベクレルのベータ放出体 ( 主にストロンチウム-90、2 億 3 千万ベクレル/リットルは飲料水における最大許容量の 3.8 百万倍に相当)が含まれている 100 トンの放射能汚染水が漏出するという事故があった。放射能は多数の経路を経て土壌に漏出していっており、当然、海洋にも漏れ出していっている。2013 年 10 月 16 日、台風 26 号に日本が襲われていた間、タンクを囲む堰や 12 基の貯水タンクから汚染水が溢れたことが報告された。2013 年 10 月 25 日、マグニチュード 7.3 の地震が発生したが、震源地はフクシマから 300 キロ以内のところであった。
 フクシマ現場周辺の放射線は増加している。現在、32,000 人以上の作業員達が現場のクリーンアップ作業に巻き込まれている。比較的被曝度が軽い熟練労働者の供給が益々不足していっており、殆どの現場作業員達は十分に訓練されていなく、多重下請けを通して雇われた日雇い労働者である。いまだに日本には、原子力産業労働者のための、国によって設定された放射線被曝登録制度がない

 2014 年 2 月中旬、 242 体の使用済核燃料集合体と 22 体の新核燃料集合体が、破壊された 4 号機原子炉上にある損壊した 4 号機使用済燃料プールから取り出され近くの敷地内にある共有プールへ移送された。;

今年の末までには、さらに 1,533 体の燃料集合体が 4 号機プールから移送される予定である。
原子炉の廃炉作業はまだ始まっていない。

 およそ 150,000 人の人々が未だに避難したままの状態にある。その多くは未だに、「もし、または、いつ」以前の我家に帰還できるのかどうか分からないままなのである。メンタルヘルスや薬物乱用問題、家族の崩壊、そして自殺が報告されている。しかし、それに関する確かなデータは殆ど存在しない。日本では 2006 年以来、学童の平均体重が少し減った一方、福島においては遊ぶことや屋外運動することが少なくなったため、子供達の肥満率が上昇するという結果をもたらしている。核災害以前の 5 年間において、福島県の肥満児の割合が全ての都道府県の中で一番高かったのは、一つの学年においてだけであった。2013 年までには、福島県の肥満児の割合が、(幼稚園-5 歳、小 1~小 6、中 1~中3、高 1~高 3 の )13 ある学年の内 6 つの学年においてトップを占めており、残りの 7 つの学年においては 2 位から 4 位の間にランキングしている。
 2013 年の 11 月および 12 月、政府機関は、避難者が放射能汚染されたホームタウンへ帰還することを促進することを目指すとの声明を公表した。この施策には支払いが含まれているー恵まれない不利な立場にある人々にとって、これは事実上の買収である。ー帰還する者には 9 万円 (US$10,000)が支払われることになる。また政府は、個人が放射線被曝量のレベルを放射線量測定によって測定することを提案している。この提案は、表面的には個人のことや場所によって被曝線量の値に差異があることを考慮した分別あるやり方のように思えるのだが、その結果が有害となることが予測できる。なぜなら提案は、比較的に環境放射線量の高い地域への帰還を容易にし奨励することを目論んでいるようであるからだ。そして、被曝線量を最小化することや、人々が過度な放射線量リスクに直面することのないような環境に住むための援助を保証するという政府や東電の責務を個人に転嫁しているからである。
 この政策の中身は実質上、これからも当局からの否認や誤報、放射線リスクの軽視が続いていくということである。未だに公文書は頑なに、100 ミリシーベルト以下の電離放射線被曝量が健康に有害であるということは証明されていないと力説し、国民に誤った情報を与えている。原発災害から 3 年後、災害の急性期は終ったと宣言されたが、日本の国家施策は未だに、放射線による健康被害を最も受けやすい子供たちや胎児も含めた全市民にとって、*年間追加積算放射線量 20 ミリシーベルトまでの被曝は許容できるということをベースにしている。年間 5 ミリシーベルトという被曝量が、白血病に罹った労働者の労災補償保険を受ける資格を決定する基準値となっている事実があるにもかかわらずである。

3 年前に IPPNW によって勧告された、

➀著しく放射能汚染された地域の住民と福島第一原発の全作業員の包括的な登録作業、

 ➁被曝の早期評価と長期的な(生涯にわたる)健康モニタリングー がまだ 実施されていないし、これから実施されるような見込みもない。

我々はまた、健康保護対策や健康モニタリングの対策を、どこに住民が居住しているのかとは無関係に、住民の被曝線量レベルに基づいて、適用するようにと勧告した。これは重要なことである。なぜなら、放射能汚染は、隣接する千葉県や群馬県、茨城県、宮城県、そして栃木県へと広まったからである。これらの県の中には、福島県内の地域よりも放射能汚染度が、より高い区域もある。しかし、災害関係の健康モニタリングやサポートは未だに、原発災害が発生した当時福島に住んでいた住民達だけのためにあるのみである。
ただひとつ実施されている包括的な健康管理は、原子力災害が起こった当時 18 歳以下だった福島の子供たちのための、2 年ごとに行われる超音波検査のみである。

1999 年に茨城県の東海村で発生した核燃料加工施設での事故後に設けられた、年間に 1 ミリシーベルト以上の被曝量を受けたかもしれないという地域の住民のために実施されている無料の健康診断とは違い、 系統/計画立った無料の包括的な健康状態のフォローアップ(事後検査 )が行われていない。
現在も進行中のフクシマ核災害への対応と日本における原子力の行く末は、世界的インパクトをもたらす可能性を持った、日本市民そして日本の環境にとって重大な歴史的転機を意味するものである。
日本は核災害の結果として本質的に一夜で、国の電力生産量の約⅓を生産する 54 基の実動原子力発電炉すべてを停止させた。省エネルギーおよびエネルギー効率プログラムが驚くほど欠乏していること、日本の高度な技術からして、国内の違った地方で違った**商用電源周波数が使われていること、人口密度が非常に高く地理的にもコンパクトな国において国内の電力送電網が不足していることーこういった事実があるにもかかわらず、日本は、原子力による発電を完全に断ってから、この 3 年間う
まく対処してきたのである。
工業生産は実質的に持続されてきており、複数の( 過去 3 回あった )暑い夏の間、電力不足はなかった。(原子力発電が停止したために)増えたガス使用の発電は、エネルギー効率と再生可能エネルギーへ投資することにより容易に相殺することが できる ばかりでなく、相殺必要量以上の余剰の電力量を生産できるようになる。日本は原子力を必要としないということが十分に証明されたのである。

日本国民の圧倒的多数が原子力の段階的廃止を望んでいる。
しかし、極度に結託し腐敗した、福島第一原子力災害と誤った災害の管理処置に責任のある産業や政府、原子力規制機関を含んだ「原子力ムラ」は、公衆安全よりも、被災者の移住・賠償金を最小化することや企業・官僚の利益を優先した。そして、自分達の陣営の砦をしっかりと固め、いつものようにビジネスを大いに営んでいこうと企てている。
新しい原子力規制庁の大部分がベテラン・メンバーで成り立っていて、彼らは、喫緊の優先課題である福島第一原発現場の状況を安定化させることや犠牲者のため/環境的損害に対処することよりも原子炉再稼働のために大半の時間を費やしてきている。「原子力ムラ」は安部晋三政権によって支援幇助されている。安部政権は、以前の政府が公約した脱原発政策を捨て、原子力発電炉を再稼働させることに熱心であり、誰にでも原子炉の輸出を促進し、核兵器利用可能の分離されたプルトニウムを、もっともらしい弁明もなく、蓄積している。

2013 年 9 月、安部首相は恥知らずにも、福島第一原発の状況は「アンダーコントロール」であり、放射能汚染水は港湾内 0.3 平方キロメートル範囲内で「完全にブロックされている」と、国際オリンピック委員会 (IOC)を安心させるための嘘をついた。IPPNW の医師たちや学生たちは、我々がこれからやってくる東京オリンピックを使って役立たせていくことを、確実にしていくべきである。: フク
シマでは何が起こっているのか、何が起こらなければならないのか、何が起こっていないのか、ーこ
れらに世界の焦点が向け続けられていくようにすることによって、である。
以上
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訳注:
*年間追加積算放射線量: 年間積算放射線量から自然放射線量を除いた、年間の人口の放射線量。
** 日本の商用電源周波数: 原文には「voltage=電圧」となっていますが、国内で異なっているのは電
圧ではなく商用電源周波数のことだと思いますので、そのように訳しました。



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